中国駐在員報告

2011年10月　社会・時事
駐在員：野村芳一

９月11日から27日まで、上海旅遊節の山車パレードに参加し、上海市内各地で静岡のＰＲを行ったため、その概要を報告する。
　まずは、天候に恵まれ、事故等もなく、期間中に行われた市内13地区の全てのパレードが無事に終了したことが幸いであった。山車を製作・管理した企業やイベント会社に委託して事業を行うことも可能であったが、当事務所が準備から実施まで直接関わったことで、単なるイベント参加に留まらず、今後につながるネットワークを作ることができた。
○パレード全般について
パレード全般について言うと、中国でイベントを行うことは日本とは全く勝手が違うことを痛感した。公式に発表されているパレードの予定時間はほとんど当てにならず、時間どおりに会場に行くと既にパレードが終了していた地区もある等、関係者である我々も正確な情報の把握に苦慮した。現場に行ってみないと詳細が分からない上、現場で交通規制している警察官でさえ事情を把握していない、そのようなことの連続であった。
正確な情報がごく一部の関係者にしか伝えられていない状況は、逆にいうと最小限の情報しか与えずに情報管理の徹底を図り、予見できない事故等を未然に防ぐということに重きを置いているということなのかもしれない。パレードを見物に来た人から不満の声が聞こえることもほとんどなかったが、当日テレビで報道されていた場所に子供連れで来ていて、山車が全く現れずにパレードが終了したことに立腹している見物人はいた。
○パレードへの支援
パレード実施については、静岡県人会や県関係企業の方にも大変お世話になった。県人会、県内企業の多くの方々が応援Ｔシャツを着て、応援に駆けつけ、パレードを盛り上げてくれた。特にうちわ17,000枚を協賛していただいた企業４社からは、うちわの他にもＰＲグッズの配布要員や山車に浴衣姿で乗る女性社員の派遣など、大きな支援をいただいた。お手伝いに来た中国人社員の方からも、イベントを楽しみ喜んで参加している様子が伝わってきた。作成したうちわは全て配布し、パンフレット類を入れた手提げ袋は、大人気で毎回飛ぶように配り終えた。
　また、中国最大手の日本語学校と連携して校内から学生スタッフを募集し、学校から推薦された学生により、山車上からのＰＲやＰＲグッズの配布を行った。参加した学生のイベント参加についての意識やモチベーションも高く、他の山車とは一味異なる訴求力の高いＰＲができたと考える。
また、全国に約１万人の学生を有するこの日本語学校については、今後、静岡への修学旅行や県内大学への留学促進などの具体的な案件で、県にとって有益な提携が進められる可能性がある。
○関係機関及びメディア等との連携
この事業に関する情報交換を通じて、上海市旅遊局や日本国総領事館などと関係が深まったことは収穫のひとつであった。旅遊局とは事業の実施についての行き違いもあったが、日本の他地域と比較して、より緊密な関係を築くことができた。日本国総領事館の泉総領事にも、９月12日のパレードに特別参加の上、静岡ＰＲ用のＴシャツを着て、秋岡ふじのくに臨時代理大使とともに本県の山車に乗っていただいた。
また、パレードの終盤には、県内旅館の女将さん５名が、県内観光ＰＲのために上海を訪れ、パレード最終日の９月27日に山車に乗ってＰＲを行った。
当事務所では、中国の新聞雑誌メディアや上海市内の旅行会社との懇談の機会を設け、女将さん方には、女将さんならではのやり方でメディア等に対して県内の観光をＰＲしていただいた。
この企画には、上海市内のＴＶ局や日本のＴＶ局等の上海支局も関心を示し、中国国内はもとより、日本国内での情報発信も行うことができた。
こうしたことで、中国メディア、日本メディアの上海支局との関係も新たに築くことができた。
○上海市郊外の発展
パレードの現場に立会って市内の各地区を回ってみたが、特に市郊外地域の発展を強く感じた。市中心部から高速道路で１時間以上かかり、周辺に明かりが見えず、人が住んでいるのかどうか分からないような地域に行っても、しばらく車を進めると突然明るいネオンや町並みが現れ、多くの市民がパレードを待っていた。市中心部と遜色ない大規模なショッピングモールがパレードの起点となることもしばしばだった。市郊外においても、今では中心部と変わらない都市生活が営めるのである。

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