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東南アジア駐在員報告
2006年4月 経済 駐在員 : 獅倉浩
シンガポールにはショッピングセンターが数多くあるが、その中でも一番の繁華街であるオーチャードロードのほぼ中央に位置し、比較的高級品を取り扱っている“高島屋”の2005年の業績が好調だった。売上高は前期比11パーセント増で約433百万シンガポールドル(以下「S$」という。日本円で約316億円※1)、税引き後利益は前期比45%増で約23百万S$(約17億円)であり、これは、1993年に創業して以来の最高額だった。
同社の売上高の増加要因の一つは、高級ブランド品の販売が好調であったことが挙げられる。高級ブランド品は、前期比19%増の売上高を記録しており、特にグッチ、バリー、トッズやボッテガベネタといったブランドの人気が目立ったということだ。同社の分析では、購入者の85%はシンガポール国民と推定されており、ここ数年の好調な国内経済が消費者の潜在的消費意欲をくすぐり、高級品の購入意欲を刺激しているようである。また、残りの15%程度は観光客による購入と推定されており、このうちインドネシアからの観光客による売上高が42%で第1位、日本が12%で第2位、中国が6%で第3位と分析されている。
同社では、2006年の売上高目標を前年比4%増、税引き後の利益目標を同7%増と、引き続き増収増益を見込んでおり、その牽引役として高級ブランド品の順調な売上増加傾向を更に定着させるべく、取扱商品やレイアウトを充実させる計画だ。
シンガポールの一人当り国民所得(※2)は、静岡県の一人当り県民所得とほぼ同額の約28,000米国ドル(以下、「US$」という。日本円で約328万円※3)である。シンガポールの消費者は、購入意欲をくすぐられる商品を求めており、消費者のニーズをうまく掴めば、今後も売上高の増加は十分に期待できるということであろう。静岡の物産も“ブランド”として確立することができれば、高額なものであってもシンガポールで販売できるチャンスは大いにあると思われる。
※2 シンガポール貿易・産業省2005年統計による国民一人当たりの所得を1シンガポールドル(S$)=0.62US$で換算
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