東南アジア駐在員報告
2016年5月 社会・時事 駐在員 : 芦澤裕之
世界におけるムスリム人口は、2030 年に全世界の26%に達すると推計されている。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、今、全世界から日本の「おもてなし」が注目されている。東京に近く自転車競技の開催地でもある本県は、早急な受け入れ態勢の整備が必要だ。
ムスリムと聞いて真っ先に思い浮かぶのは「ハラール(イスラム法で許されているもの)」という言葉かと思う。宗教に関する問題であることから、受け入れる側としては慎重にならざるを得ず、対応に尻込みをしている県内施設も多いのではないかと予想する。
4月23日、シンガポールで開催された「オールジャパン・ムスリムフレンドリーセミナー」に参加した。内容は、日本のムスリム旅行事情に詳しい旅行プランナー、小説家などのスピーカーが、40人程度のムスリムの一般参加者に対して、日本に行ったらどのような旅行ができるのかを詳しく説明するものだ。
ムスリム対応の先進地である札幌、大阪などでは、「ムスリムおもてなしマップ」を作成し、印刷物やWEBで配布している。マップの内容はレストラン、みやげ屋、礼拝所、体験施設などである。興味深いのは、レストランには純日本料理からラーメン、フレンチまで、体験施設にはカラオケやネイルサロンなどの施設が幅広く掲載されていることだ。セミナーの内容とも共通することだが、ムスリム旅行者は、ムスリムだからといって特別扱いを求めるのではなく、他の外国人旅行者と同様、「普通の」日本の文化を体験してみたいのだ。
ムスリムおもてなしマップを作成した専門家に話を伺ったところ、マップへの店舗掲載に当たっては、ハラール認証の取得が条件ではなく、表示を工夫してムスリムの方が自分で判断できるようにしてあげる「ムスリムフレンドリー」な対応でも充分なのだという。
関係者の皆様には、ぜひ、ムスリム対応セミナーへの参加や専門家の助言を受けるなど、できるところから対応を始めていただきたいと思う。ハードルは思うほど高くないはずだ。
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