ヨーロッパ駐在員報告
1999年4月 政治 駐在員 : 森 貴志
・クルド人の庇護
今年2月、クルド人労働者党(PKK)の党首エチャラン議長がトルコ当局に逮捕された際、ドイツをはじめとして欧州各地でクルド人による抗議運動、暴動が吹き荒れた。現在ドイツには約50万人のクルド人が住んでいるが、PKKは、エチャランの逮捕に関与したと伝えられる国を強く非難しており、ドイツの治安当局の間では、PKKがテロ活動に走る可能性を指摘する声も強い。
ドイツの法律では、人種、宗教、政治思想上の理由により本国で生命の危険にさらされている外国人の政治亡命の受入れや庇護を保証し、強制送還の禁止を定めている。したがってテロ活動を展開する可能性のあるPKKの党員であるという理由だけでは、庇護の要請を拒む事はできないが、幹部をはじめ党への関与度によって、「ドイツの治安を脅かす」と判断された場合は、庇護権を剥奪することができるという判断をドイツ連邦裁判所が示した。
国土なき流浪の民の運命は非常に厳しいものであり、独立国家樹立の理想を掲げているPKKの武装闘争という行動は解決策とはならず、欧州の理解者を失っていき、立場がますます悪化してきている。
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