台湾駐在員報告
2018年5月 経済 駐在員 : 内藤 晴仁
中国政府は、台湾に対する優遇政策「恵台31条」を発表した。「恵台」とは「中国が台湾へ利益を譲渡する」の意味で使われており、「恵台31条」には中国の国家重要プロジェクト「一帯一路」への台湾企業の参画や、台湾の若者が中国で就職や就学する際の優遇策等が含まれる。
これに対し、台湾では優秀な人材や技術等の中国流出に警戒が高まった。台湾行政院の頼院長は「「恵台31条」は中国が台湾を呑み込もうとするもの」と述べ、すぐさま優秀な人材の引止めや研究機関への支援策強化等を盛り込んだ「4大方針」と「8つの具体策」を発表した。
中国と台湾の対台湾優遇政策をめぐる政府間の駆け引きは激しい対立を呈しているが、経済面では中台は非常に密接な関係にある。台湾経済部の統計では、2017年の台湾の輸出入額の割合が最も高いのはいずれも中国であり(輸出割合:約41%、輸入割合:約19%)、中国で活躍する「台商(台湾企業)」の中には「恵台31条」を歓迎する企業もある。
先日、現地ニュースの中で、米国と良好な関係にある台湾政府と中国と取引を深める「台商」との間で、米中貿易摩擦に対する考え方にずれが生じている、との報道があった。番組のインタビューでは「台湾人意識はあるが、就職先は高待遇の中国を考えている」と答えた台湾人の若者が取り上げられていた。中国政府の「恵台31条」をはじめとした台湾への経済的アプローチは、少なからず台湾の企業や若者に影響を与えているようだ。
台湾政府は新南向政策やTPPへの加盟検討等、中国以外の経済交流の糸口を模索している。今後の中台政府の駆け引きに引き続き注目をしていきたい。
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