東南アジア駐在員報告
2014年9月 社会・時事 駐在員 : 吉住 理恵子
8月9日は、シンガポールのナショナルデーであり、この時期、街は政府機関や一般住宅の窓に多くの国旗がはためくようになる。
建国記念日関連事業として政府が大々的に行うのが、ナショナルデー・パレード(NDP)と、ナショナルデー・ラリー(NDR)である。
NDPは建国日当日に、マリーナベイ地区で、コンサートやショー、陸海空軍によるデモンストレーションが行われる。
編隊ヘリが巨大な国旗を吊り下げてマリーナベイサンズの横を飛び、普段は観光客を乗せた遊覧ボートが行きかうマリーナベイを機関銃搭載の戦闘用ボートが走り、戦車から現れた陸軍兵が銃を構えて観客席を駆け上がるフローティングスタジアムで国民が小旗を振って熱狂的に見入る光景は、初めて見た日本人の私の感覚からするといささか異様にも思えたが、一定の軍事力によって国への信頼感を醸成する手法はどこの国でも共通の一面ではあるのだろうという気もする。50周年の来年は、先日完成したスタジアム「スポーツ・ハブ」に会場を移すことが決まっており、マリーナベイ地区で最後の開催となる今年は、入場券抽選の人気が例年以上に高かったようだ。
NDRは首相による施政方針演説で、今年は8月17日にアン・モ・キオ地区にある技術教育学院(ITE)キャンパスで開催された。経済中心から国民寄りの姿勢へとシフトを打ち出しつつも、チャンギ空港のターミナル5や複合施設「プロジェクトジュエル」などの大型プロジェクトについても言及した昨年度に比べ、今年は、教育、健康、福祉を柱に、大学を頂点とした学歴偏重社会からの転換や、老後の生活の柱としての持ち家制度や年金制度(CPF)の改善など、より市民に近い施策展開を強調していたように見受けられた。次期の総選挙を睨み、国民の間にCPF問題や、移民政策をめぐる不満、格差への配慮が噴出していることへの配慮だろうか。
NDP(Singapore NDP 2014)、NDR(National Day Rally 2014)ともに、YouTubeで視聴可能であり、ご覧になると観光都市として以外のシンガポールの一面を垣間見ることができるかもしれない。
日付別一覧 地域別一覧 分野別一覧
|