台湾駐在員報告



2017年4月 政治
駐在員 : 宮崎悌三


3月25日及び26日に台北市内で開催された日本の地域の魅力を紹介するイベント「多彩日本」の開幕式に出席するため、赤間総務副大臣が公務で訪台した。
 1972年の日台国交断絶以降、日本政府は政府高官の相互訪問について、中国への配慮から自粛していたが、報道によると、日台断交後初となる政府高官の訪台とのこと。
 「台湾問題は中国の核心的利益に関わり、挑戦は許さない」とする中国外務省からの強い抗議に対して、日本政府は「(イベントは)日本の地方の魅力を発信するためのもの。日本と中国の関係は非常に重要で、戦略的互恵関係の下、前進させていきたい。」(岸田外務大臣)とコメントしている。
 副大臣は、台湾のメディア取材に対し、今回の訪台は、地域創生を担当する総務省の業務としてイベントに参加したとの認識を示したほか、東京電力福島第一原発事故後、日本産食品の輸入規制措置(福島県を始めとする5県の食品輸入規制など)を台湾が続けていることに関して「台湾に日本の食品が安全であることを訴えることが狙い」と話した。
 以前、この駐在員トピックス(2016年12月)でも触れたとおり、台湾では、日本産食品の輸入規制解除は、政争の具と化している状況にある。私の複数の知人の感触では、今この状況で、この問題を敢えて取り上げることは、輸入規制解除に反対する勢力に利するだけではないかという意見も聞かれた。
 台湾の一部のメディアでは、日本産食品を「放射線を浴びた食品」などの表現で伝えるなど、報道内容に関して科学的な根拠が明確ではなく、人々の不安感を掻き立てかねない情報も流れている。
 昨年一年間で400万人を超えた台湾からの訪日客のうち、輸入規制をされている5つの県にも少なからずの人が足を運び、旅行を楽しんでいる一方、日本政府からの輸入規制解除の要求を“鵜呑み”にする台湾政府に不信感を抱く人もおり、輸入規制解除そのものだけが問題となっているのではないように思える。日本政府が主張するように、科学的根拠に基づいて議論されるべきなのは台湾の人々も理解しているが、日本産食品の輸入規制解除には、台湾政府自らが台湾の人々を納得させる解決策を示すことが何より必要ではないだろうか。
 その意味で、外国から来た副大臣の発言は、今の台湾の人々に素直に聞き入れられたとは言い難いのではないだろうか。

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