中国駐在員報告
2008年3月 経済
駐在員 : 若田部 孝
拡張続ける中国の空港整備
〜世界一、国内初が目白押しの空港整備〜
今年の北京オリンピック、2010年の上海万博というビックイベントを控えた中国では、旅客輸送等の能力を大幅に増強するため、空港の拡張に取り組み、その施設が完成し始めた。
その第一陣として、2月29日に北京市の北京首都国際空港(以下、「北京空港」という。)の第3ターミナル(以下、「T3」という。)が運営を開始した。
これは、五輪重点プロジェクトの一つで、3年9カ月にも及ぶ工事期間を経て総面積約98万uのT3が完成した。これで北京空港は、3つのターミナルビル、2つの管制塔、3本の滑走路(それぞれ国内初)を持ち、搭乗ゲート数は71から137に、駐機場数も164から314に増加した。また、同時に整備した3,800m級の第3滑走路では、「F類航空機」(注1)の離着陸が可能で、設備が整えば世界最大の新世代旅客機であるエアバス「A380」(注2)も離着陸できるようになるなど、同空港は世界最大の空港の一つになった。
T3は、T3-C、T3-D、T3-Eの3つのエリアで構成され、T3-Cエリアには、国内線、国際線、香港・マカオ・台湾線の搭乗手続きカウンター、国内線出発ゲート、国内線と国際線のバゲージクレーム等がある。T3-Dエリアでは、五輪・パラリンピック開催期間中はチャーター便業務を行い、その後は、国際チャーター便サービスを行う。そしてT3-Eエリアには、国際線、香港・マカオ・台湾線の出発ゲート、全線の到着ゲートがある。
なお、新ターミナルに移転・新設する航空会社は、1期目としてブリティッシュ・エア・ウエイズなど6社が2月29日午前0時に入居したほか、2期目として日本航空、全日空など21社が3月26日午前0時に入居する予定である。
次に、万博会場となる上海市でも、2年の工事期間を経て、上海浦東空港(以下、「浦東空港」という。)の3,400m級の第3滑走路が完成し、2月19日には中国東方航空のエアバスA340-300型機がテストランに成功した。上海市は、国内で初めて民間機用の4本の滑走路(上海虹橋空港1本、浦東空港3本)を持つ都市となり、北京市を追い越すとともに、さらに上海虹橋空港では、第2滑走路を建設中である。
また、今回、浦東空港で拡張された建築物の総床面積は、約150万uと公表されており、新たに整備された第2ターミナルも3月26日に試験供用を開始し、上海航空など最終的には国内外の33の航空会社が利用する予定である。このターミナルの設計上の処理能力は年間4,000万人であり、浦東空港全体の処理能力約7,300万人の約55%を占める予定である。
なお、第2ターミナルの整備に伴い、既存の第1ターミナルとの中間に交通ターミナルを整備し、リムジンバス、タクシー、一般車両の利用を集約する。
最後に、広東省広州市内にある広州白雲国際空港は、これまで国内で最大級のターミナルを持っていたが、T3を整備した北京空港に追い抜かれた。しかし、こちらでも、現在2本の滑走路を最終的には5本にする予定であり、その内1本はアメリカの物流会社であるフェデックス社専用の滑走路となるそうだ。
中国の国土は広大で、日本の面積の約25倍、EUの約2.5倍の面積を持つ国である。その空の窓口として、北京市、上海市、広州市の国際線の空港が覇権を競っており、さらに香港もそれに加わる。これらの報道に接して感じることは、空港単独の整備も重要だが、もっと重要なことは、周辺地域へのアクセスとしての高速道路・地下鉄の整備、国内線空港・主要鉄道駅への連絡であり、最終的には利用者の利便性をいかに高めるかにかかってくる。
(注1)「F類航空機」
「F類航空機」は、飛行場等級「コードF」分類で指定された航空機のこと。「コードF」とは、ICAO(国際民間航空機関)が設定した飛行場の等級のことであり、A380等の新型大型機に対応する飛行場として、ターミナルの駐機間隔や滑走路と誘導路の間隔を広げるなどの対応が必要である。また、A380は客席が総2階建てであるため、2階部分のボーディングゲートなどの空港設備が必要となってくる。
(注2)「A380」
「(エアバス)A380」は、ジャンボ機「ボーイング747」を抜いて世界最大の機体を誇る世界初の総2階建て、かつ客席数も500席を超えた旅客機である。機体の大きさは、全長72.6m×全高(地面から尾翼の先まで)24.1mとなっている。機体価格は、2億6千万米ドル(日本円で約286億円:1ドル=110円換算)を超えるというデータもある。
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