東南アジア駐在員報告
2022年1月 社会・時事 駐在員 : 福田 渉
2021年も東南アジア諸国は新型コロナウイルス感染症への対応に振り回された1年だった。
5月、シンガポールでは次の首相候補と目されていたへン・スイキャット副首相が新型コロナウイルス感染症対策は数年かかる見込みとして、次期首相は自分よりも若い世代が担うべきとの認識を示して、首相候補を辞退した。当時、ワクチンの普及とともに感染者数も減少し、これまでの社会経済活動が早期に取り戻せるのではないかという楽観的な見方も少なくなかったが、シンガポールの首相候補が見立てた通り、状況は簡単には改善しなかった。
デルタ株の出現でインドでは4〜5月に感染が爆発的に広がり、1日の新規感染者数は40万人を超えた。インドネシアなどでも医療状況がひっ迫して駐在員や家族を日本に帰国させるなど、現場では緊急対応に追われた。その頃から各国政府はワクチン接種を更に加速させて、ウィズコロナ期における新しい生活様式を浸透させるようになっていった。
一方で、前年から続く国際的な渡航制限の影響で、飲食業、観光業、留学生や外国人労働者を頼りとする産業なども深刻なダメージを受けていた。公的支援の限界もあり、各国政府は制限を緩和して渡航者を受け入れる試みを始めた。
9月、シンガポールでは、ワクチン接種完了者を対象に隔離期間なしの入国を認めるワクチントラベルレーン(VTL)の運用を開始した。タイやマレーシア、インドネシアやフィリピンも緩和に動いた。シンガポールでは韓国を含む18か国とのVTLが設置され、日本との間でも期待が高まった。しかし、12月上旬、新たな変異株オミクロン株が確認されると、緩和の動きは冷水を浴びせられ、VTLが設置されていた国々とも再び隔離措置を設ける動きが取られるなど、制限を再強化する動きにつながった。これにより2022年の各国の経済状況も再び不透明な状況になっている。
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