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東南アジア駐在員報告
2000年4月 経済 駐在員 : 岩城徹雄
香港の通信事業者ケーブル&ワイヤレス争奪戦
2000年1月に、シンガポールの通信事業者シンガポール・テレコム(ほとんどの株を政府が保有)が、アジア屈指の通信企業である香港のケーブル&ワイヤレス・HKT(C&W・HKT;旧香港テレコム)の買収を発表して以来、シンガポール政府による香港通信市場の支配だ、いや買収でなく対等合併だとの論戦や、シンガポール・テレコムがルパート・マードック氏率いるオーストラリアの大メディア企業のニューズ・コーポレーション社から10億米ドルの出資を受け買収を有利に進めるこことを明らかにしたり、アジアの通信市場を巡って大きな騒動となっていた。
結果は、当初シンガポール・テレコムの買収のパートナー候補であった香港のパシフィック・センチュリー・サイバー・ワークス社(PCCW)が、381億米ドルでC&W・HKTを買収することになり、約1か月続いた騒動に終止符を打った。
PCCW社のリチャード・リー会長は香港の財閥の出身で、数年前、東京駅八重洲南口旧国鉄用地を高値で落札したことで、日本でも名を知られている人物である。シンガポール側では、PCCWが土壇場になってから横取りのような形で買収したことに批判が高まり、また、リー氏の父親は香港きっての実業家で中国政府にも顔がきく人物であるため、ライバルであるシンガポールに香港通信市場を支配されるのをよしとしない中国政府が背後で動いたのではないかとの見方も出た。
リー氏は、買収発表直後の3月はじめにシンガポールを訪れ、地元紙のインタビューに応じ、「シンガポールの気分を害してすまなく思うが、今回の買収は逃すことのできないビジネスチャンスであり、反シンガポールの動きと受け取ってほしくない。」とコメントし、中国政府の存在については、噂に過ぎないと否定した。
なお、シンガポール・テレコムは、オーストラリアのニューズ・コーポレーション社からの出資はなくなったものの、同社との提携でインターネットや広帯域サービスなど新たな分野への進出が可能と表明している。東南アジアの通信市場からは今後も目が離せないものと思われる。
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