東南アジア駐在員報告



2002年6月 社会・時事
駐在員 : 岩城 徹雄


    サッカーFIFAワールドカップ、東南アジアでも盛り上がる
    初のアジア開催となったサッカーFIFAワールドカップは、時差も少ないことから東南アジアのファンにとってもこれまで以上に身近な大会と感じられているようである。各国の話題を拾ってみた。
    ・タイ
    ASEANの中では唯一アジア最終予選まで残って奮闘したタイでは、サッカーへの関心もひときわ高い。配信されるW杯関係のニュースも域内では飛びぬけて多いが、ゲームそのものよりも賭けに熱中するファンの方が多いのではないかと見る向きもある。ある大学の調査では、賭けをする人は首都バンコクで40万人、全国では200万人に上るようである。銀行系の調査機関で行ったバンコク都民へのアンケートでは1試合平均1人2,600バーツ(約7,800円)の掛け金とのこと。W杯期間中にタイ全国でサッカー賭博に200億バーツ(約600億円)が投じられるとの予想もあり、ムエタイ(タイ式ボクシング)、競馬など他のギャンブルの売上がかなり減るものと予想されている。また、新聞各社が実施する懸賞に応募するための葉書の需要が急増している模様。
    テレビ観戦に配慮をと、文部大臣が学校の授業終了時刻をW杯期間中に30分繰り上げて午後3時にするとの珍提案を行ったり(直後に撤回)、政府観光庁では日韓両国を訪れる欧州からの観光客を目当てに、途中でタイに立ち寄り観光をするようキャンペーンを打ったりと、行政がらみの話題もある。欧州から日韓へはバンコク経由となる航路が多く、観光客以外にフーリガンがタイに集合し開催地侵入を計画しているという、ありがたくない情報もある。
    ・シンガポール
    シンガポールでは、御殿場・裾野でキャンプをしているはずのウルグアイ代表チームが日本を抜け出し同国代表と親善試合を行ったり、欧州のスター選手を使ったケーブルテレビ局の看板が街中に見られるなど、前景気があおられていたが、1次リーグの序盤では国内の盛り上がりも今一つという感じである。2万4千人の観衆を集めたウルグアイチームの試合は、選手からも「(日本へ帰る飛行機に間に合わせるため)試合終了後のシャワーも浴びられない。」という不満もあったようで、地元紙にも開催を疑問視するかのようなコラムもあった。一方1対2で敗れたシンガポール代表チームは、2010年にはW杯本選出場をめざしているが、多くの国をW杯に導いた現中国監督のミルチノビッチ氏に監督就任を依頼したが断られたとの情報もあり、前途は多難。当分テレビ観戦が続きそうである。
    W杯期間中は、証券取引所の市場参加者も減り薄商いが続くとの見方もされている。繁華街のレストランやバーではどの店もテレビやプロジェクターを設置し誘客に努めており、イングランド、フランス、イタリアなど人気チームの試合ではあちこちから大きな歓声が聞こえる。準決勝以降は政府庁舎前の広場に巨大スクリーンを設置し無料開放される計画もあり、トーナメントが進むにつれ少しずつヒートアップしていくものと思われる。
    ・マレーシア
    マレーシアでも、ブラジルチームがキャンプ前に同国代表チームと親善試合をしたり、全試合の生放送が政府から認められるなど、関心が高まっている。人的資源省では、テレビ観戦目的での休暇申請があった場合には柔軟な対応をするよう経済界に要望しているという。大会序盤では生産活動への影響は無いようだが、サッカー賭博に参加する国民も多く、佳境に入ってからの動きを心配する向きも多い。
    ・インドネシア
    インドネシアでもサッカーへの関心が高く、民放局で全試合が放映される。同国のテレビの約4分の1のシェアを占めるある韓国メーカーでは、テレビの需要増を当てこみ月間の生産台数を20%増やす計画という。
    ・フィリピン
    この国ではサッカーの人気は今ひとつ。アメリカとの関係が強いこともあり、バスケットボールなどの人気に押されているようで、筆者が5月下旬にマニラを訪れたときも街なかでW杯関係の広告などはあまり見られなかった。

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